豊かな暮らしと、僕のランニング
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「何もない島」の贅沢と、僕が走る理由

【自己紹介】

皆さんからすると「なにもない島」に見えるかもしれない、長崎県五島列島の上五島。

ですが、僕はここで贅沢に暮らしています。

海と山で遊び、自然の恩恵をいただきながら過ごす日常。僕にとって「走る」ことは、タイムを競うようなストイックなものだけでははなく、島の豊かな食と自然を五感で味わうための大切な「暮らしの手段」です。

読めばきっと五島へ来たくなる、そんな幸せな島暮らしをこれからコラムとしてお届けできればと思っています。どうぞよろしくお願いします。

1種1匹。海とひとつになる静かな葛藤

僕の毎日の生活の基盤は、五島の青くて澄んだ海です。この海の恩恵を受け、ここで塩を作り、その塩を土台に五島うどんを製造している会社を経営しています。仕事も遊びも、海が無くては生きていけない人間です。

休みの日も海へ行きます。最近は大好きなスピアフィッシング(魚突き)をすることが多いです。(もちろん、ちゃんと漁業権は持っています)

タンクを背負わず、自分の息だけで水深20メートルほどまで潜ります。

飲食店もやっているので、獲るのは自分が美味しく食べられる分と、お店で使う分だけ。「1種1匹」を基本に、「ありがとう」の気持ちを込めて必要な分だけをいただくのが僕のルールです。(たまに欲望が勝って、1種2匹になることもありますが……笑)。

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五島の海の中に潜ると、そこには少しユーモラスな生き物たちの世界が広がっています。

たとえば石鯛。彼らはとても好奇心旺盛で、海の中でこちらから「おいで」と手招きをすると、嬉しそうにすうっと寄ってくるんです。

列を作るかのように1匹ずつ順番によって来ることもあります。

その中で、小顔でムクっとした、脂の乗った2キロくらいの子を狙います。海の中で会話をするように見極める時間は、何にも代えがたい贅沢です。

一方で、少しテクニックが必要で難しいのが、高級魚として知られるクエです。ものすごく警戒心が強くてシャイな魚。必ずこちらをじっと見つめながら、胸ビレをヒラヒラとさせて様子を伺っています。

なかなか近寄らせてくれない……。

フィンや道具が岩にカツンと当たるような、自然界にない音が少しでも聞こえると、寂しいくらい一瞬でいなくなってしまうんです。

だから、クエと向き合うときは、心を「無」にします。

ドキドキして興奮してしまうと、その心の揺れが不思議と魚にも伝わってしまう。水深が深くなると、水圧で肺が小さくなって「早く息を吸いたい」という焦りも生まれますが、そこをぐっと堪えます。秒速10センチくらいののんびりとしたスピードで、優しく、ゆっくり近づいていきます。

僕の射程距離である1.5メートルくらいまで。

その、自然とひとつになるような静かな葛藤に勝てて初めて、僕らは最高のごちそうに出会うことができます。

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20キロ超えのクエ(25人で食べきれませんでしたw)
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走ることで磨かれる「平常心」

そんな愛おしい島の世界を本気で楽しむために、僕は普段から身体を動かし、山や坂道を走っています。

最近は海好きというのもあってトライアスロンにはまっています。

大会に出てタイムを競うのも好きなんですが、僕にとって走る本当の理由は少し違います。

「この坂を上り切ったら、この山を登り切ったら、さらにまだ見たことのない、新しい五島の美しい景色に出会えるかもしれない」

海で焦らずに優しい気持ち(平常心)を保つための、タフで健康な心肺。

そして、自然の中にそっと溶け込むための身体のコントロール。それらはすべて、日々のランニングで身についていると感じています。

この島がくれる圧倒的な美しさや美味しさを、五感をいっぱいに開いて受け止めるための、心地いい日常の習慣なんです。

未来へつなぐ「上五島トレイル」

そして、僕にはもうひとつ、走ることと同じくらい大切にしているものがあります。それが「上五島トレイル」という大会です。僕はここで、前夜祭と後夜祭の指揮をとらせてもらっています。

ランナーの皆様が、わざわざこの島まで船に乗り、たくさんのお金と時間を費やして来てくれる。そのことが本当にありがたくて。

「また来年もこの島に来たい」と思ってもらえるためには何ができるだろうかと、仲間たちとみんなで知恵を絞っています。

この大会がこの先もずっと長く続いてほしいから、地元の子供たちにお寿司の握り方を指導して、ランナーの皆様に振る舞う取り組みも始めました。

「自らの手で生み出したもので、大人たちがこんなにも喜んでくれる!」

ランナーの皆様が美味しそうに食べてくださる最高の笑顔は、子供たちにとって何にも代えがたいリアルな成功体験となっています。

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島に来て下さる皆様のおかげで、未来を担う子供たちの心も一緒に育っているんです。

温かい笑顔を見せてくださり、本当にありがとうございます。

次回の大会も着々と準備が始まっていますので、ぜひ楽しみにお越しください。

これから、この大好きな島での暮らしや美味しい食、冬の山での小さなお宝探しのような遊びのお話やランニングの事を少しずつつづっていけたらと思っています。

これを読んだ皆さんが、「五島の優しい風に吹かれたいな」「上五島トレイルを走って、あの美味しい寿司を食べてみたいな」と、旅に出たくなるような記事になれば嬉しいです。


南慎太郎のアバター

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