霧えび直前のグルランのときに、友納さんから「10時間切ってきなよ」とハッパをかけられていました。軽く「はい、10時間は切りたいんですよね」と答えたものの、内心は「行けるのか俺?」と思っていました。
結果から言うと、切れませんでした。友納さん、すみません。
ただ言い訳をさせてもらうと、この10時間切りというタイム、昨年までのコースだったら多分行けてたんですよね。今年はコース変更で距離は3km短くなった反面、累積標高が500m追加されました、しかもギザギザのトレイルで。スタート前に主催者からも「昨年より30分から1時間長くかかると思います」と言われてました。はい、言い訳です。
前回は「GPX楽しいよ、という話」を書きました。GPXはロストしないためだけのものではなく、走る前にコースを予習したり、長い距離を小さく区切ったりするための道具でもある、というような話です。
作り方そのものは次回以降にじっくり書くとして、今回はまず実例を見てもらった方がイメージが湧くと思うので、先日走ってきた霧島えびのエクストリーム、通称「霧えび」での話を書いてみます。
霧えびを走るのは初めてで、経験者からは林道や舗装路ばかりのコースだと聞いていました。
ただ、「林道や舗装路ばかり」と言われても、それだけではあまり作戦は立てられません。どこが林道なのか。どこからトレイルに入るのか。長い登りは走れる傾斜なのか。下りは気持ちよく走れるのか、それともガレていて脚を使うのか。
同じ距離、同じ累積標高でも、サーフェスが違えばレースの感じ方はかなり変わります。特に僕は下りが苦手なので、急な下りや長い下りがどこにあるのかは、できるだけ事前に知っておきたいところです。
さっきも書いた通り、今年の霧えびは一部区間でコース変更がありました。林道だった区間がトレイルに変わり、距離は少し短くなったけれど、累積標高は増えたとのことでした。


距離が短くなったから楽になる、とは限りません。むしろ細かいアップダウンが増えると、数字以上に脚を使うこともあります。なので今回は、昨年のコースと今年のコースを見比べながら、「どこが変わったのか」「その変更でレースの流れがどう変わりそうか」を確認していきました。
GPXの編集には、いつもGPX.studioというWebアプリを使っています。ブラウザ上でGPXを開いて、コースを確認したり、Waypointを追加したり、名前を変えたりできるので便利です。細かい使い方はまた別の回で書くとして、今回も大会から提供されたGPXをGPX.studioで開き、そこに自分がレース中に知りたい情報を足していきました。
大会から提供されていたGPXをそのまま時計に入れても、コースを追うことはできます。でも、僕が知りたいのはコースの線だけではありません。
そこで僕はいつも、レース用のGPXを2種類作って時計に入れています。

ひとつは、エイドのWaypointだけを入れたシンプルなGPX。もうひとつは、エイドに加えて、登り、下り、Road、Trailhead、River、PeakなどをWaypointとして大量に入れたGPXです。
なぜ2種類にするかというと、次のエイドまでの距離や累積標高を確認したいときに、Waypointが多すぎると少し見づらくなることがあるからです。そういうときは、エイドだけを入れたGPXに切り替える。普段は情報多めのGPXを見ながら、次に何が来るかを確認する。同じコースでも、知りたい情報に応じてGPXを使い分けている、という感じです。
今回、まず最初に追加したのはエイドの場所です。次のエイドまであと何kmか分かるだけで、レース中の気持ちはだいぶ楽になります。


次に、地図を眺めながら、林道、舗装路、トレイルの切り替わりそうな場所に、TrailheadやRoadといった名前でWaypointを入れていきました。ここからトレイルに入る。ここからロードに出る。そういう切り替わりが分かると、気持ちの準備ができます。

長い登りや下りが始まる場所には、8km UH、7km DHのようなWaypointも入れました。UHはUphill(登り)、DHはDownhill(下り)のつもりです。名前は自分が分かればいいので、かなり雑です。

レース中に「ここから登り」と表示されるより、「ここから8km登り」と分かる方が、心の準備ができます。下りも同じです。下りが苦手な僕にとっては、この下りはしばらく続くと分かっているだけで、少しだけ覚悟ができます。
地図上で川を横断しそうな場所には、RiverというWaypointも入れておきました。暑くなったときに身体を冷やせるかもしれない、という期待を込めてです。
結果から言うと、Riverのポイントはほぼすべて水が流れていませんでした。水浴びする気満々だったのですが、現実はそんなに甘くありませんでした。

それでも、地図を見ながら「ここで身体を冷やせるかも」と考えている時間も含めて、僕にとってはGPXの予習です。外れることもあります。でも、外れたら外れたで、次から見るポイントが少し増えます。
今回いちばん役に立ったのは、新しく変更されたトレイル区間に入れたPeak番号でした。
その区間は、細かいアップダウンが連続するパートでした。そこで、それぞれのピークにPeak(1/6)、Peak(2/6)というように、何番目のピークなのか分かる名前をつけておきました。


実際には、ひとつひとつのアップダウンはそこまで大げさなものではありませんでした。でも、レース中に「今は3つ目」「あと3つ」と分かるだけで、気持ちはかなり楽になります。まだアップダウンが続くと思うのと、あと何個と分かっているのでは、同じコースでも受け止め方が少し変わります。前回書いた「分割して統治する」の、かなり分かりやすい実例だったと思います。
RoadのWaypointも役に立ちました。トレイルパートできつくなってきても、「あそこまで行けばRoadに出る」と思えると、もう少し頑張れます。
ただ、実際に行ってみると、Roadと入れていた場所からすぐに気持ちよく走れる舗装路になるわけではなく、しばらくガレた林道が続いたりもしました。これも現地に行ってみないと分からないことです。
GPXを読み込んだからといって、何でも分かるわけではありません。地図上では走れそうに見えても、実際にはガレていることもあります。川だと思って楽しみにしていた場所に水がないこともあります。逆に、思っていたよりずっと走りやすいこともあります。
それでも、事前にGPXを見ておくことで、今回の霧えびではかなりレースのイメージを作ることができました。
前半には細かいアップダウンが集中している。ここで脚を使いすぎないようにする。後半は登りも下りも長いけれど、傾斜やサーフェスを見る限り、ちゃんと走れるはず。だから後半は頑張って走る。
そんなふうに考えてスタートしました。
結果的に、レース運びはかなりそのイメージ通りになりました。前半は細かいアップダウンで無理をしすぎず、後半の長い登りや下りでしっかり走る。終盤にかけて少しずつ順位を上げることもできました。
もちろん、GPXのおかげだけで走れたわけではありません。練習も体調も補給もありますし、実際には走ってみないと分からないことだらけです。
でも、何が来るか分からないままきつい場面を迎えるのと、ある程度分かったうえできつい場面を迎えるのでは、やっぱり違います。
僕にとってWaypointは、元気なときの自分が、レース中の疲れた自分に残しておくメモのようなものです。「ここから長い登り」「あとピークは3つ」。レース中の自分は、だいたい疲れていて、暑くて、判断力も少し落ちています(今回はAS1以降上裸でした)。だからこそ、事前にGPXを眺めながら、未来の自分が知りたくなりそうな情報を入れておく。

ちなみに今回は、UltraPacerで10時間ゴール想定のタイム表も作っていました。ただ、レース中はほとんど見ていませんでした。あとで見返してみると、実はかなりオンスケで進んでいて、最後のエイドでのんびりしすぎたぶんだけ少し遅れていました。友納さん、あと少しだったんですけどね。

このあたりの話も、またどこかで書けそうです。
次回は、実際にどうやってGPXにWaypointを追加しているのか、もう少し具体的に紹介してみたいと思います。
