サハラ砂漠マラソンを終えた僕に、次の目標を与えてくれた一言があります。
「たいちゃんなら100マイルも完走できるよ!」
その言葉をかけてくれたのは、サハラ砂漠マラソンで同じテントになった松井さんでした。
7人で共同生活をする砂漠のテントで、僕のすぐ横にいた松井さんから言われたその一言が、僕の次の挑戦を決めるきっかけになりました。
初めて意識した100マイルへの挑戦
当時の僕は、トレイルランニングの大会といえば20km程度のレースしか経験がありませんでした。
100マイル(約160km)を40時間近くかけて走る世界なんて、正直まったくイメージできません。でも、松井さんの言葉を聞いてから不思議と興味が湧いてきました。
「せっかく挑戦するなら、世界最高峰と言われるUTMBを目指したい」
そう思い、帰国後すぐにUTMBについて調べ始めました。すると、参加するためにはITRAポイントが必要だということが分かりました。
当時のUTMBは、必要なポイントを獲得するために、複数の対象レースを完走する必要がありました。(UTMBは3レースで15ポイントが必要だった)
100マイルレースでは6ポイント、100kmレースでは5ポイントが付与されます。サハラ砂漠マラソンは6ポイントが付与されていたため、あとは4ポイントの60kmのレースと、5ポイントの100kmのレースを探すことになりました。
初めての海外100kmへ
しかし、調べていくうちに問題が発覚します。国内の100kmレースに参加するためには、過去の完走実績など条件がある大会も多く、当時の僕には参加資格がありませんでした。
そこで目を向けたのがアジアでした。参加するための条件は、参加資格が不要なこと。福岡からアクセスしやすいこと。参加人数が多いこと。(人数が少ないと遭難リスクも高いため)
条件に合うレースを探してたどり着いたのが、香港で開催される「The North Face 100 Hong Kong」でした。
人気レースのため抽選でしたが、運よく当選。僕にとって初めての海外100kmレースが決まりました。
初めての香港、初めての海外トレイル
当選後、まずはホテルとスタート会場までの移動方法を調べました。
地図を見るとスタート地点は香港の端の方にあり、かなり遠く感じましたが、調べてみるとタクシーでそれほど時間も料金もかからないことが分かり、安心したことを覚えています。
この時、初めて海外LCCの香港エクスプレスを利用しました。航空券もかなり安く、「海外レースは意外と身近なのかもしれない」と感じた瞬間でした。
前日に香港中心部のノースフェイスの店舗で受付を済ませ、スタート会場との中間にある沙田エリアのホテルへ移動。

翌日、早朝にチェックアウトし、タクシーでスタート会場へ向かいました。無事に到着した時は、それだけでホッとしました。
初めての100km、その厳しさ
いよいよスタート。
初めての100km。
しかも香港の中でも厳しいコースと言われる大会だったため、不安を抱えながらのスタートでした。

12月開催ということもあり、「香港ならそこまで暑くないだろう」と思っていました。しかし、それは大きな間違いでした。30kmほど進んだところで、暑さにやられてしまいます。
熱中症気味になり、しばらく走ることができず、10km近く歩いたと思います。それでもエイドにはカップラーメンなど十分な補給があり、何とか前へ進むことができました。

香港のトレイルは、石階段が非常に多いのが特徴です。序盤は登りに苦しみ、後半になるにつれて今度は下りで足が削られていきました。特に下るたびに足へ衝撃が入り、痛みが増していったことは今でも鮮明に覚えています。
夜の香港トレイル
夜になると山は真っ暗になります。普通なら不安になる場面ですが、香港の山はすぐ近くに街があり、左右には街の明かりが見え、完全な孤独を感じることなく走ることができました。

ただ、夜間の大きな敵は眠気でした。エイドに到着するたびに、「ここで少し仮眠しよう」と思って入るのですが、休めるスペースはなく、結局、毎回眠気を抱えたままエイドを出発しました。
24時間後のゴール
ゴールした時、空はすでに明るくなっていました。気づけばスタートから約24時間。人生で初めて経験する長時間のトレイルランでした。
ゴールでは木製のメダルを受け取り、さらにゴールタイムを刻印してもらいました。そのメダルは今でも大切に保管しています。

しかし、まだ終わりではありません。
おそらく起きてから27時間以上経過していましたが、ホテルへ戻らなければなりません。公共交通機関で香港島へ向かいましたが、何度も寝落ちしそうになりながら移動しました。ようやくホテルへ到着しても、チェックイン時間前だったため部屋には入れず、荷物だけ預けて、そのまま眠気と戦いながら香港観光へ。
今思えば、よく観光できたなと思います(笑)。
このレースが今につながっている
この香港100kmを通して、海外レースは意外と気軽に参加できるものだと知りました。福岡からなら、LCCを利用することで、国内の遠征とそれほど変わらない交通費で海外へ行くことができます。
そして、そこには日本とは違う景色や文化、そして何より、まったく知らない土地へ行くワクワク感があります。
この経験があったからこそ、その後、僕はアジアを中心に海外レースへ挑戦するようになりました。
サハラ砂漠マラソンが100マイルへのきっかけをくれ、香港100kmが海外レースの楽しさを教えてくれた。
僕の海外レース旅は、ここから始まりました。
