100kmを、実験の場にする

崩れて、戻る。そして自分のために走る100kmが、誰かのためにもなる

第三回

100kmを、実験の場にする

速い人が強いとは限らない

SOUTHPARK100をやっていると、参加者が共通して気づくことがある。

普段速いランナーが、必ずしも100kmでは強いわけではない。

仲間の中で「あの人は速い」と知られているランナーが、途中で体調を崩して横になっていることがある。逆に、普段それほど速くない人が淡々と走り続け、最後まで崩れないこともある。

100kmでは、単純なスピードとは違う能力が求められる。

大切なのは、自分をコントロールし続けることだ。序盤で飛ばしすぎない。食べる。飲む。休む。暑さに対応する。身体の小さな変化に気づく。崩れ始めたら対処する。そして、崩れてしまっても、そこから戻していく。

100kmという長い時間の中では、ほとんどの人に何かが起きる。重要なのは「壊れないこと」だけではない。「壊れたときに、どう戻すのか」も含まれる。

苦しそうだった仲間が復活して、再び走り始める姿を見る。それは自分自身の経験にもなる。

ロングレースで自分が苦しくなったとき、「あのとき、あの人も一度完全に崩れた。でも戻ってきた」と思い出せる。「いま苦しくても、自分も復活できるかもしれない」と信じられる。

これは、ロングレースを続けるうえで大きな力になる。途中でやめる人と、そこからもう一度動き始める人の違いのひとつは、「この状態から自分は戻れる」と信じられるかどうかでもあるからだ。

SOUTHPARK100では、自分自身の経験だけでなく、仲間が崩れ、立て直していく姿からも、その感覚を学ぶことができる。

100kmを、実験の場にする

ここが、この特集でいちばん伝えたいことかもしれない。

SOUTHPARK100は、ただ100km走ればいい練習ではない。参加者には「自分はこの100kmで何を試すのか」を考えて参加してほしいと思っている。

過去の参加者に、「20kmごとにしか自分のエイドを利用しない」と決めて走った人がいる。

南公園では約2kmごとに、自分の荷物を置いた場所へ戻ることができる。そのたびに止まり、飲み、食べ、休むこともできる。しかし実際の100マイルレースでは、次のエイドまで15km、20kmということも珍しくない。そこでその参加者は、目の前に自分の補給物があっても、20kmに達するまでは利用しないという自分なりのルールを設定した。本番を想定した練習にするためである。

何度かSOUTHPARK100を経験した参加者ほど、こうした自分なりのテーマを持ってくるようになる。

どのペースなら100kmを維持できるか。どのタイミングで何を食べるか。補給間隔は適切か。持っていく水分量は足りるか。どのウェアなら長時間動き続けられるか。いつ着替えるか。夜間の装備はどうするか。暑さにどう対応するか。疲労した状態で何が食べられるか。眠気が来たときどうするか。

自分で課題を設定し、それに対して準備してくる。そして実際に試す。

うまくいけば、本番への自信になる。失敗すれば、修正できる。

何も考えずに100km走るより、明確なテーマをひとつ持って100kmを走る方が、得られるものははるかに大きい。

SOUTHPARK100は、自分自身を使った実験の場でもある。「100kmを走る練習」ではなく、「100kmをどう走るのかを練習する場所」なのだ。

2026年、少しだけ形を変える

2026年のSOUTHPARK100では、これまでとは違う試みをひとつ加える。チャリティーイベントとしての開催である。

きっかけは、2026年7月28日に熊本で発生した災害だった。被災した地域に対して何かできないか。ただ、現地へ行って活動することだけが支援ではない。距離や仕事、時間の事情で動きにくい人は少なくないし、7trails自身もその一人である。ならば、自分たちが普段やっている「走る」という行為を通して、できる範囲のことをやってみよう。そう考えた。

通常のSOUTHPARK100は、7trailsのグループラン参加経験者を中心に非公開で行い、参加費も取ってこなかった。2026年はチャリティーとするため、初めて広く参加を受け付けた。

100kmを目指す正式エントリー枠は参加費3,000円、定員50名。この50名には、従来のSOUTHPARK100の考え方をそのまま引き継いでもらう。100kmを目指すこと。そして走れなくなっても、日曜日12時にはその場所にいること。

あわせて、100kmを目指さない人も参加できるチャリティー枠を設けた。距離は問わない。10kmでも20kmでもいい。途中から参加してもいいし、好きな時間に帰っても構わない。参加費は固定せず、投げ銭方式とする。

集まった参加費と寄付金は、熊本県八代市で活動するボランティアチーム「チームドラゴン」へ全額寄付する予定だ。チームドラゴンにはランナーも多く在籍し、トレイルランニング大会の運営や災害時のボランティア活動に携わってきた、ランニングを通じてつながりのある仲間たちである。自分たちが直接できないことを、現地で動ける仲間へ託す。

100kmの途中には、「もうやめよう」と思う瞬間が必ず来る。そんなとき、この走りが自分だけのためではないと思えることは、案外大きいのかもしれない。今回だけで終わらせるつもりはなく、今後も、その時々で必要とされている場所や活動へ寄付するかたちで続けることを検討している。

SOUTHPARK100は、100kmを完走した人を称えるためのイベントではない。100kmという長い時間を使って、自分自身を知るための合同自主練である。

そして最後の12時には、走り切った人も、走れなかった人も、同じ場所にいて、一緒に乾杯する。

問いは、いつもひとつだ。

「100kmを走れるか」ではなく——

自分は100kmをどう走るのか。

(了)

最後はみんなで乾杯しよう!