「もう朝ごはん作るの疲れた。明日からよろしく!」
共働きの妻から突然朝飯ボイコット宣言を受けたのは長女が5歳になった頃だからもう8年前だ。
先に断っておくが私は洗濯係だった。
洗濯して干して畳んでの一連の作業に加えて、風呂掃除、食後の食器洗い、娘たち(当時5歳、3歳、1歳)と一緒にお風呂に入ったり遊んだりといったことも率先してやっていたと思う。
家事分担は少なく見積もっても50-50だったと言いたい、いや言える。
妻は家事育児が嫌になった訳ではなく、単純に朝ごはんを作るのが嫌になっただけだった。
時間的には朝の洗濯と変わらない家事仕事ではあるが、献立を考えるー準備するー料理する、というプロセスは地味に大変である。
特に『献立を考える』というところで疲弊していたのだろう、実際妻の作る朝食はこの1年『食パンと何か』か『グラノーラと牛乳』に大体固定されていて、怒られるから口には出さなかったが私も飽きていた。
「…了解。」
こうして結婚以来続いていた我が家のご飯係と洗濯係が入れ替わることになった。
料理スキル。
私は男三兄弟の真ん中で育った。
育ち盛りの小学生はとにかく食べる。
母は料理をする人であったが、男三人がどれだけ飯を食うか(準備すればいいか)を多分よく分かっていなかった。
共働きだったこともあって、準備されていた晩御飯は晩御飯の時間がくる前になくなっているのが当たり前だった。
我々男子一同は足りないエネルギーを満たすべく、各々勝手に料理を始めていた。料理、と言ってもご飯(お米)に合う何かを作るところから。
手始めに卵かけご飯から始まり、目玉焼き、スクランブルエッグ、オムレツ、○○丼、、小学生男子が考える最高の素材『卵』を使った料理ばかりではあったが、兄弟3人でお互いの出来栄えや味を競い合う日々を送っていた。
その甲斐ありキッチンに立つことに違和感を覚えないくらいには成長したように思う。ちなみに卵は最後両手で一個ずつ片手で割れるくらいになっていた。
いきなり飛んで大学。
1年間休学し、カナダ・ウィスラーに行った。
ワーキングホリデービザを取得、働きながら英語を習い、カナダの自然、現地でのフィールドワークを学ぶための1年、と言ったらとても格好がつくが、ただスノーボードがしたいというだけの渡航だった。
行った先で遊んで暮らせるほどのお金はもちろんなく、現地の日本食レストランで働いた。
どうせ働くならチップの額が期待できる場所の方が効率的と考え、4つ星ホテルWestin-resort Hotel 内にある日本食レストランで働くことにした。
ただバイトに選択肢はなく、女性が配膳、男性は厨房だった。
自信を持って言えるが、そのレストランのオーナー兼シェフのトム(仮)はかなり適当な日系カナディアンで
「日本人なら誰でも日本食(っぽいもの)作れるでしょ?」という感じで料理のことは何も教えてくれなかった。
いきなり西京焼きのオーダーがきたことは今でも忘れられない。
リゾート地の高級ホテルで食事を楽しみにきたお客さんもまさか卵焼きくらいしか出来ない素人バイトが料理していたとは思わなかっただろう。今考えても不憫である。
ただ一つ救いだったのは長年そこで働いていた日本人女性のマチコさん(仮)(マチコさんだけ女性で唯一厨房&カウンターで寿司を握りながら働いていた。適当なオーナでもお店が回っていたのは間違いなく彼女のおかげだろう)に色々と助言頂き、その後出くわしたトムからの数々の無茶振りにもどうにか対応できた。
ありがとうマチコさん。
かくして帰国する頃には私の料理スキルは格段に上がっていたのだった。
役割変更後。
朝ご飯係になって一番に感じたことは洗濯係の方が楽だったということ。
基本洗濯機が自動でやってくれる。
人間がやることと言えば、干すものと乾燥させるものとに分けて干すだけだ。
そこにほぼ思考は挟まず慣れたらこの作業も自動化される。
ただ朝ごはんは違う。
妻、子供たちが食べたいものの中から栄養バランスなど考えてこちらが食べてほしいものを選択、さらに4人のニーズに合わせて少しずつカスタマイズしないといけない。
カスタマイズの件、我が家の目玉焼きを例に出すと長女は黄身の部分がやや半熟(70%)、次女は半熟(50%)、三女はその間(60%)といった具合だ。書いていてもめんどくさい。そして彼女たちは自分が納得のいく焼き加減でないと食べない。
食べないのである!
男家庭で育った私の常識からは考えられなかった。
…女の子、つええ。

続く。
テーマについて。
今回「トレイル時々メシ」というテーマでウェブマガジンに寄稿しようと思った理由を少し。
僕自身レースに出てタイムや順位を意識して頑張っていきたいランナーの一人ですが、家庭では3人娘の父として子育てに奮闘しています。
45歳になって娘たちも中学生、小学生と成長しましたが、きっとまだまだこれからです。自分が楽しく自信を持ってトレイルランニングを続けていくには、家族の理解があってこそ。
妻や子供たちが
「行っておいで!」「パパ頑張って!」
と気持ちよく後押ししてくれる環境を整えることが自分のパフォーマンスを発揮するためにも最重要だと思っています。
僕にとってその環境を整える手段が「メシ作り」。
ランニングと家庭のバランス、僕のバランスは「メシ作り」で成り立っています笑
手段は違うけど同じような境遇のランナーの方々もきっと少なからずいるはず。
そういった方々に僕の事例からちょっとした勇気と笑いをお届けできたらと思い「メシ」という切り口でランと家庭のバランスをお伝えしていくことを考えました。少しでも共感いただけると嬉しいです。
さて。
第1回でトレイルの話全く出てきませんでしたが、石川さん、こんなんで連載していって大丈夫っすかね?笑
